薬物依存の怖さ

ある刑務所を担当していた時のことだ。西日本最大の刑務所だが、そこでの仮釈放審査の多くは覚醒剤事件だった。

なかには、覚醒剤の密輸事件に絡んだ事件もあったが、ほとんどは覚醒剤の自己使用だった。私は東海地方でもその地域で最大の刑務所を担当したことがあるが、そこでも同じく覚醒剤事件だった。その2か所ともB級施設といって再犯者を収容する施設である。いかに覚醒剤事件で再犯を繰り返す者が多いかがわかる。入手先は決まって同じ地域の一定の場所で売人から入手していた。警察の取り締まりも行われているのだろうが、その取り締まりの上を越して事件が行われていた。

覚醒剤を使用した者の渇望感は喉が渇いて水を求めるように薬物を求めてしまう。

警察に逮捕されても家の中に覚せい剤を隠しておき、刑務所から出所後、隠していた覚醒剤を使ってしまう。彼らは偶然見つけたように言うが、あらかじめ隠していたようだ。

覚醒剤も最初の使用時の頭髪が逆立つような快感も回を重ねるごとに薄れ、惰性で使用してしまう。

薬物依存からの回復のためには支援者が必要だ。NAやダルク(薬物依存回復施設)等と関係を持って離脱することが回復への早道だ。

刑務所からの仮釈放時点でダルク等へ直接帰るケースも少なからずあった。

覚醒剤の密売人がいる地域に帰るケースもあり、再犯を心配したが、受け入れるところがなく止む無く仮釈放にした者もいた。

日本の場合、覚醒剤取締法違反や大麻取締法違反等、法律で薬物の使用を禁じているが、使用者には法律違反による刑罰の執行(刑務所の中で使用を断つ)しかない。今は再犯防止指導が刑務所内でも行われるようになったが、薬物依存症者に対する処遇としては根本的な考え方、薬物依存は病気であり、治療が必要であるという考えに転換する必要がある。

コラム

Posted by エリク